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社長ブログ 科学ネタのあれこれ~その6「レーザー」
こんにちは、豊田周平です。科学ネタシリーズを数回に分けてお話してきましたが、最後は皆さんにも身近なレーザーについて、その種類やプロジェクタ(映画館のIMAXシアターの仕組みや3Dメガネ)のことなどお話させてください。
「レーザー」ときいて、どんなものを思い浮かべますか?CDやBlu-rayのディスク、プレゼンなどで使用するレーザーポインター、プロジェクションマッピングなどでしょうか。
<レーザーの特徴>
簡単に言うとレーザー(LASER)はLight Amplification by Stimulated Emission of Radiation の頭文字をとったものです。直訳すると「誘導放出による光増幅放射」という意味で、何のことかよくわからない用語になってます。
単色(光の波長の幅が狭い)で、真っ直ぐ進む(広がりにくい)、エネルギーが集中する、光の波が揃っていることなどが主な特徴です。これらの特徴を利用して、さまざまな用途に使われています。
<レーザーの種類>
レーザーは、発信する材料によって大きく分けられます。主なレーザーについてご紹介します。
・固体レーザー:個体材料を使ったレーザー。ルビーレーザー、YAGレーザーの結晶材料をレーザー媒体に使い、それに高輝度のランプで励起(外部からレーザー媒体に光エネルギーをあてること)し、レーザー媒体を発振させます。レーザー媒体が固体なので取り扱いがしやすく、多くの分野で使われていました。
・気体レーザー(ガスレーザー):ガスなどの気体を使ったレーザー。He-Ne(ヘリウムネオン)レーザー、Ar(アルゴン)レーザー、CO2レーザーなどがあります。CO2レーザーは大きなパワーが得られるので、レーザー切断や溶接など多くの分野で使われてきました。
・半導体レーザー:半導体を使った一番身近なレーザー。LEDと基本的な発光原理は同じですが、レーザー発振をする構造を半導体の中に作ることで実現します。小型、高効率、長寿命のレーザーなので、多くの分野で使われています。特に光通信に関しては半導体レーザー(波長が1550nmの近赤外光を使う)がなければ実用化できなかったもので、今のネット社会においてはこれがないと実現できなかった、なくてはならない存在です。
・ファイバーレーザー:光ファイバの中に添加物を入れて、レーザー発振をさせるもの。大きなパワーが必要な分野で使用される。
初期は固体レーザー、ガスレーザーが加工、医療の分野で使われてきましたが、装置の頻繁なメンテナンスが必要だったり、冷却装置が大掛かりになるなどのデメリットもあり、現在は半導体レーザーや半導体レーザーを光源としたファイバーレーザーが多く使われています。
<プロジェクタ>
レーザーの用途についてはいろいろ本ブログで紹介してきましたので、最近導入が著しいレーザーを光源に使ったプロジェクタについて紹介します。
プロジェクタは明るさ・色の鮮明さ・コンパクト・省電力であることが重要となります。
皆さんご経験があるかと思いますが、今までのプロジェクタは光源にハロゲンランプを使っていたので、点灯まで時間がかかる、冷却ファンの音がうるさい、消灯してから冷えるまで電源が切れない、ランプが切れてしまったなど色々と不便でした。
その後LEDを光源に使ったもの、そしてレーザーを使ったプロジェクタが手頃な価格で購入できるようになり、かつての悩み事はなくなったのではないでしょうか?
以前にも話した通り、ランプは電力のほとんどが熱になってるため、明るいランプを使えば使うほどより多くの熱が出てくるのでその分ガンガン冷やさないといけないわけです。それを半導体光源であるLEDやLDを使うことで、光源自身だけでなく冷却部も小さくできます。
<RGB半導体レーザーと光拡散ファイバー>
私たちが普段目にするあらゆる画像や映像は、光の三原色であるRGBのそれぞれの信号からできています。ランプの場合一度フィルターでRGBの三色に分けて、それぞれに映像を載せて(透過型の液晶などで)、再度RGBの3つの映像を合わせなければなりません。そのため光学系(フィルタ、レンズ、プリズムなど)も複雑になってしまいます。それをRGBで別々のレーザーを使えば、それぞれの強さを変化させることと、それぞれのビームを振ることで映像を作ることができます。
現在、一般的に普及しているレーザープロジェクタは価格の問題などからランプ型とRGBレーザー型の中間のものですが、IMAXシアターで使われているレーザープロジェクタは完全にRGB3色のレーザーを使ったものです。
また、現在ピコプロジェクタと呼ばれるスマホ大のプロジェクタはビームを振るのにMEMS(マイクロマシンのミラー)を使っており、レンズなどの光学系がありません。そのことによりフォーカスフリー(ピント合わせをしなくてもいい)で非常に使いやすいものになっています。但し、日本では法規制で大パワーのものは制限されてますので、数人で見るなど用途が限られていますが。
3Dを楽しめる映画館のIMAXシアターではレーザープロジェクタで投影されています。プロジェクションマッピングで使われるような大型のプロジェクタもレーザー光源です。
IMAXシアターで使われているレーザーにはもう一つ仕掛けがあります。行ったことがある方は今までとは違ったメガネを渡されたかと思いますが、従来の3Dは光の偏光(光の波の振動方向)の縦横で違う映像を流して、偏光メガネで左右の眼で違う映像を見て立体視していました。ですが今のIMAX3Dは左右で波長の少しだけ違うレーザーを使って左右の映像を投影しています。そのため偏光を使ったものに比べ、よりはっきりした立体像が見えています。偏光メガネの時は持ち帰ることもできましたが、今のは専用のメガネフィルタを用いた高価なものなので出口で回収されています。
地下街や駅などで液晶や有機ELを使ったデジタルサイネージ(電子看板)が多くありますが、プロジェクタが高輝度で効率良くなればこれらが取って代わることになるのではと期待しています。液晶などのパネルは重たいので設置場所も限られてしまいますが、プロジェクタなら壁に投影するだけなので設置も融通性も高くなります。
家庭のリビングにでーんと居座っているテレビがもしプロジェクタに代わったら、どれだけ部屋がスッキリするでしょうか。リビングだけでなく寝室の壁や天井へ投影することも可能です。
レーザーについて興味を持たれた方は、よろしければ光やレーザー関連の過去ブログもご覧ください。
光について https://www.toyodas-coltd.com/column/4200/
太陽光について https://www.toyodas-coltd.com/column/4259/
照明について https://www.toyodas-coltd.com/column/4289/
光源・LEDについて https://www.toyodas-coltd.com/column/4314/