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社長ブログ 身近なレーザーの技術
身近なレーザーの技術
皆さんこんにちは。豊田周平です。私はサラリーマン時代に「光エレクトロニクス」分野に関わってました。光学材料、加工技術、成膜、フォトリソグラフィーなどデバイスを作るための技術の開発、そしてその技術を使った光ファイバ電流・電圧センサ、画像処理素子、光ファイバジャイロ、並列光伝送デバイス、など光を使った様々な分野の研究開発をしていましたが、今回は身近に使われているのに、多くの方があまり知らないレーザーについてお話しをさせていただきます。
レーザー技術の進化はめまぐるしく、私たちの生活を便利にしてくれている反面、兵器に使われていたりレーザーポインターを飛行機に照射とかで、悪いイメージを持たれている方も多いのかと。レーザーの特徴は、広がらずに進む、単色、干渉する、短いパルスが作れる、短い間隔で繰り返せる、大パワーが可能など様々で、昔はガスを使ったものやルビーなどを使ったものが主流で、大型で冷却が必要など結構大変でした。それが半導体を使った半導体レーザーやファイバレーザーなどがでてきたコンパクトでいろいろな分野に使うことができるようになってからは、実は身近な存在になってきています。
ネット関係がレーザー技術が欠かせない
インターネットで検索するのもLINEで無料通話ができるのも、レーザーによる光ファイバ通信があるからです。これは光ファイバの中を減衰がほとんどなく通る1550nm(ナノメートル、近赤外の光)のおかげ。例えば、昔の国際電話は地上→衛星→地上や電気ケーブルに信号をのせて送っていました。だから昔の電話は距離が遠いところは料金が高く、簡単に海外とのやりとりなどできませんでした。それがインターネットの進展で音声をデータとして送るのでSkypeをはじめとする無料通話が可能に。
これは半導体レーザーと光ファイバが実用化され、光のオン−オフをつかった伝送になったからです。当初は音声通話のみだったのが、データ通信もできるようになり(インターネット)しかも光ファイバ通信だと光ファイバ一本で大量のデータが送れる様に。小生が携わっていたころから波長多重通信と言うのが実用化され、波長(光の色)の違ったいくつかの光をまぜて一本の光ファイバに通して、受ける側でまた波長毎に分ける技術が開発されました。<太陽の光をガラスプリズムで虹色に分けるのと同じ様なことです>
1995年がインターネット元年と言われていますが、PCの普及とアル・ゴア米国副大統領のインフォメーションハイウェイ構想で光ファイバ通信は海底ケーブルだけではなく、都市間や家庭での接続にまで普及しています。
これにはすべて半導体レーザーと光ファイバの実用化と低価格化がなければ実現していません。もちろんその周辺技術(光ファイバアンプや各種光デバイス)もありますが、きっかけになったのは半導体レーザーと光ファイバです。
半導体レーザーの最初の室温連続発振は1970年で、光ファイバの実用化レベルの損失低減が実験室で達成されたのも1970年ころでしたが、どちらも本当の実用化には20年以上の歳月が必要となりました。これだけ当たり前のように使われているレーザー技術も、実は実用化までにはかなり苦労をしているのです。
さまざまな最新技術にも
レーザー技術は工業用途でも使用されることも多く、例えば最近の車は鋼板をレーザーで高精度に切断し、レーザーで線状に溶接しています。レーザーで切断・溶接することで、今までできなかった細かな加工が可能となり、さらに大幅な加工スピードがアップ。
また、車の衝突防止のセンサーにも赤外線のレーザー車の衝突防止のセンサーにも赤外線のレーザーが使用されています。
そのほかにも紙や服地の切断、半導体の加工製品の仕上がりを検査する測定器にも(厚み、平面度)レーザー技術は使われ、3Dプリンタなども最新の技術にも採用されています。映画の投影に使うプロジェクターの最新のものは光源にレーザーを使用。大阪エキスポシティにできた109シネマズは日本初のレーザープロジェクタなど、レーザー技術は危険なものではなく私たちの生活を豊かにしている部分があるという事、そして長年実用化に向けて努力した技術者がいたという事を少しでも理解してもらえればと思います。